FAQ
製品について
人工尿道括約筋とは、正常な尿道括約筋の機能を代替するカフを手術で尿道へ留置し、ポンプを操作することで、尿の排出をコントロールできるようにするシステムです。人工尿道括約筋は3つのコンポーネント(カフ、圧力調整バルーン、コントロールポンプ)から構成されており、すべて体内に植込まれ、外からは見えないようになっています。
システム概要

3つのパーツで構成され、圧媒液(生食)の移動を効果的に使ったシリコーン製デバイス

コントロールポンプを3~4回押すと、カフが完全に開きます。その後、数分でカフは再び閉まります。
作動休止とは、人工尿道括約筋のカフが開いた状態に保たれていることを言います。主に、以下の2つの事象の際に必要となります。
- システム留置後、4~6週間
- 尿道カテーテル留置や経尿道的処置が必要な時
作動休止方法
ポンプを押して、カフを完全に開いた後、コントロールポンプに水が9割ほど戻ってきた段階で、作動休止ボタンを押します(図1)。(カフが完全に開放された段階で、水が圧力調整バルーンに移動しています。①まずはコントロールポンプ内に水が戻り、②その後、カフに水が戻ります。作動休止は、①の段階で行います)。
図1:コントロールポンプに水が9割ほど戻った状態

作動休止ボタンを押すことで、内部のピンが下がり、圧力調整バルーンから、カフへの水の移動を止めます。(図2)
図2:作動休止ボタンを押す

実際に植込んだ状態では、カフを完全に開放した状態(=ポンプを3回ほど押して、完全に押しつぶした状態)から、ポンプに軽く指を当てたまま、水がポンプ内に戻ってくることを感じながら操作します。
注意:もし休止できていない場合は、コントロールポンプが100%膨らんだまま、または軟らかい状態となっています。ある程度の水量がコントロールポンプにないと、水圧で内部のピンを上げることが難しいため、水が9割ほど戻った段階で作動休止ボタンを押してください。
作動開始方法
ポンプを一気に押して、水の水圧で、ピンを押し上げることで、再開します。ピンを押し上げることで、圧力調整バルーンからカフへの水の移動が再開されます図3(膀胱内に尿を溜めることができます)。
(図3):ポンプを一気に押し、水の水圧で、ピンを押し上げる

注意:もし再開できていない場合は、1~2分経っても、コントロールポンプが完全な形に戻らないままとなります (少しくぼみがある状態 もしくは、押しつぶしたまま)
ひしゃげたままの場合は、作動休止ボタン付近の側面(硬い部分)を何度か強く押すことで、ポンプ内に水を戻し、上記の作動再開方法を行います。
下記のリンクにて動画でも方法を紹介しています。
http://www.bostonscientific.com/jp-JP/products/ArtificialUrinarySphincter/AMS800.html
治療について
成績
海外の調査では、5年で74%、10年で57%、15年で41%が使用できているというデータがあります。
また国内の調査においては、3年で81%というデータもあります。
《参考文献》Long-term Outcomes Following Artificial Urinary Sphincter Placement: An Analysis of 1082 Cases at Mayo Clinic Brian JL., et al, Urology. 2015 Sep;86(3):602-7
Surgical and Patient Reported Outcomes of Artificial Urinary Sphincter Implantation: A Multicenter, Prospective, Observational Study Y. Kaiho., et al, J of Urol 2017, 199: 245 – 250
人工尿道括約筋は患者様のQOLを大きく改善し、高い患者満足度を示しています。
手術を受けた患者の満足度、仮にもう一度尿漏れした場合、再手術の希望度合い、同じ悩みを持つ患者さんに薦める度合い等、いずれも高い満足度を示しています。
調査対象:50人

《参考文献》Post-Prostatectomy incontinence and the artificial urinary sphincter:a long-term study of patient satisfaction and criteria of success. J Urol Dec 1996 V.156(6) P. 1975-1980より作図
1日1枚かそれ以下で済むようになる方が、約7~9割程度と言われています。
有害事象の具体例は、糜爛/感染/尿閉/アレルギー/出血/尿道の切断・損傷/疼痛/排尿困難/灼熱感/構成品の移動/発疹/炎症/組織の病変/血腫/尿道憩室形成/切開創ヘルニア/浮腫/嚢胞形成、などです。
適応
前立腺全摘術や、前立腺肥大症、尿道狭窄治療などに伴う外尿道括約筋の機能不全が適応となります。重症では、第一選択となっており、中等症では、精神的な負担を感じている場合は、適応とされています。
その他、尿意があること(認知症ではない)、指先の機能に問題がないこと、人工尿道括約筋のメカニズムを理解できることが、適応条件となっています。
国内の現状は、前立腺全摘に伴う尿失禁では全摘後6ヵ月以上の経過観察を経てから適応可能かの診断が主に行われ、93%が前立腺全摘に起因する尿失禁治療に適応されており、前立腺肥大症や、外傷に伴う尿失禁でも使用されています。
施設基準
はい。以下の2点を満たしている必要があります。
- 泌尿器科を標榜している医療機関であり、泌尿器科において常勤の医師が2名以上配置され、そのうち少なくとも1名は、5年以上の経験を有すること。
- 緊急手術体制が整備されていること
届出においては、専用の届出用紙(3部)を、所属する厚生局から入手し、申請ください。
保険・費用
はい。2012年4月より保険適用となっています。
技術料:K823-5
材料:172 尿道括約筋用補綴材
カフ:17,000 点
圧力調整バルーン:15,600 点
コントロールポンプ:42,700 点
2012年4月より保険適用になっており、高額療養費制度も利用できます。
製品使用方法
製品の詳細に関しては添付文書等でご確認いただくか、弊社営業担当へお問い合わせください。
はい。生理食塩水のみを推奨いたします。圧媒液中に異物が存在すると、本機能の作動が影響を受ける可能性があります。従って生理食塩水は細胞内液と等張性であるため、半透過性の性質を持つシリコーン(本製品の材質)の膜を通して、圧媒液が構成品から出たり入ったりする可能性を最小限にします。
留置時に22cc注入します。
どのコンポーネントからでも留置は可能ですが、尿道損傷が発生した場合は処置後、期間を空けて再手術を推奨しているため、カフから留置することをお薦めしています。
当製品を使用する場合は、施設の滅菌手順に従って処理し、下記表にあるいずれかの条件で滅菌することを推奨します。
滅菌方法 | 曝露温度(標準) | 曝露時間(標準) | 乾燥時間(標準) |
---|---|---|---|
蒸気オートクレーブ | 121℃ | 30分 | 30分 |
プレバキューム式 蒸気オートクレーブ | 134℃ | 3分 | 30分 |
プレバキューム式 蒸気オートクレーブ | 132℃ | 4分 | 20分 |
術後の注意点
カフサイズが最小の4.0cmの場合、カフを完全に広げると円周が40Frとなるため、尿道の厚みを考慮しても30Frはあることから、26Frの内視鏡まで挿入可能です。
12Frもしくは、14Frと細い径を入れることを推奨しています。
カテーテルの留置期間は通常短期間(1~2日)ですが、状況に応じて適切に判断してください。
患者様の生活について
スポーツ全般および他の活動の参加に関しては、患者様の総合的な容態を考慮し、判断されることをお薦めしております。スカイダイビングやスキューバダイビングのような体全体に圧変化のある活動では、本品の機能が影響を受けることはありません。
所定の条件下でMRIを受けることは可能です。詳細に関しては添付文書をご確認ください。
また、コントロールポンプ内部に使われているステンレスは少量のため、空港でのセキュリティーチェックで警報が鳴ることはありません。
はい、可能です。
はい。英語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語のカードがあります。下記が英語のカードのサンプルとなります。
ご希望の場合は弊社までお問い合わせください。

患者様が自転車に乗ることを希望される場合は、分割サドル(アナトミカルサドル)の使用を推奨しています。サドルについては専門の自転車店にお問い合わせくださるようご案内ください。

本製品による患者様の性活動への影響はありません。但し、性活動中もカフは閉まっているため精液も含め尿道を通して排出されるものはブロックされています。
パートナーの方には、コントロールポンプの位置およびその操作方法など、本品について理解してもらうようお話しいただくことをお薦めしています。