
このページでは腎がんについて情報提供させていただきます。
ー監修ー | ||
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九州大学病院 泌尿器・前立腺・腎臓・副腎外科 教授 江藤 正俊 先生 |
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兵庫医科大学病院 主任教授/診療部長(放射線科) /放射線医療センター長 山門 亨一郎 先生 |
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腎臓のはたらき
●腎臓とは

●腎臓のはたらき
【 尿をつくる 】
腎臓の大切なはたらきの1つに、尿をつくることが挙げられます。
血管を通して全身をめぐり流れてきた血液は、腎臓の中で「ろ過」されます。ろ過によって取り出された老廃物は、尿として膀胱から体の外へ排出されます。ろ過されたきれいな血液は再び全身へと流れていきます。
老廃物が排出されず、体の中に溜まってしまうと、体のむくみや息苦しさ、食欲不振、頭痛、吐き気などの症状が現れます。
【 その他の腎臓の働き 】
・体の中の環境を整える
・赤血球の産生を促す
・血圧を調整する
・骨を丈夫にする

腎がんとは
腎臓は、「腎実質」や「腎盂」と呼ばれる部位から構成されています。
腎がんは、「腎実質」のがんのことを指し、腎盂がんとはその性質や治療法が異なります。
腎がんは、顕微鏡による組織の見え方でいくつかの種類に分類されます(組織型分類)。
その種類によって、治療の内容が異なります。
●症状
腎がんが小さい初期には、多くの場合症状はみられません。そのため、健康診断や人間ドックの際に偶然発見されることが多いです。
腎がんが進行して大きくなると、以下のような症状が現れる場合があります。
進行した腎がんの主な症状
・血尿(尿が赤くなる)
・背中や腰、おなかの痛み
・おなかのしこり
・倦怠感、発熱
・体重が減る

腎がんの病期
●TNM分類
TNM分類とは以下の3つの要素を表しています。 | |
T:がんの広がり | |
N:リンパ節への転移とその度合い | |
M:ほかの臓器への転移 |
●病期(ステージ)
病期は、治療法を選択する際の判断の1つになります。
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腎がんの検査
●腎がんの検査と診断
腎がんは近年、人間ドックなどで行われる画像検査で偶然発見されることが増えています。
検査は以下の方法があり、状態によって適切に選択されます。
- 画像検査
- 腹部超音波検査(エコー検査)
- CT検査
- MRI(核磁気共鳴画像法)
- 核医学検査(シンチグラフィ)
- 血液検査
- 腎生検
腎がんの治療
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腎臓の治療方針
手術には腎がん部分のみを取り除く「部分切除術」、がんができた側の腎臓を取り除く「腎摘除術」があります。
部分切除術
腎がん部分を、周りの正常な腎臓の組織を少し含めて切除する手術です。
できる限り腎機能を温存するため、可能であれば部分切除術が行われます。
がんの部位と大きさによって部分切除が可能かを判断するため、がんが大きかったり、腎臓の中心部に位置したりする場合、部分切除は難しくなります。
腎摘除術
がんとともに、腎臓すべてと周囲の脂肪組織を1つの塊として摘出する手術です。
がんの部位や大きさによっては、副腎を合併切除することもあります。リンパ節や近接する主要静脈にまでがんが進展している場合、それらも可能な限り切除します。腎がんではステージIVなどの進行例であっても、可能であれば腎摘除術が行われます。
腎がんの治療方針はがんの大きさや広がりによって、次のようにガイドラインに記載されています。
※2 がんの範囲が広く、手術が難しい場合、分子標的薬による薬物療法を行い、がんを小さくしてから手術することがあります。
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①手術療法 |
腎がんの手術は腹腔鏡または開腹で行われます。これらの手術は全身麻酔下で行われます。
腹腔鏡下手術 |
部分切除術や、がんが腎臓内にとどまっている場合の腎摘除術に用いられる、標準的な手術の1つです。
内視鏡や手術器具を出し入れするために2cmほどの孔をおなかに数ヵ所開け、モニターに映し出された映像を見ながら行う手術です。
孔を開ける位置は、がんの位置や大きさなどを考慮して決められます。そのため、手術時には体を斜めや横にするなど、それぞれの患者さんに適した体位がとられます。
腹腔鏡下手術は開腹手術に比べて出血量が少なく、術後回復が早い、入院期間が短い手術です。
しかし、がんのサイズが大きい場合には、開腹手術に移行することがあります。また、病院によっては、ロボット支援手術で腹腔鏡下手術が行われることがあります。
開腹手術 |
腎がんでは可能な限り腹腔鏡下手術かロボット支援手術が行われることが増えていますが、以前に腎臓の手術をしたことがある方や慢性腎臓病の方、がんが大きかったり、静脈にまで進展していたりして腹腔鏡下手術が難しい場合には 、開腹手術が選ばれることがあります。
開腹手術では、おなかの中心やわき腹から切開します。
切開の位置や手術中の体位は、腸管や肝臓などの腎臓周辺の臓器を傷つけないようにすることも考慮して決定します。
手術の流れ |
- 手術前に術衣に着替え、血栓予防のための弾性ストッキングを着用します。手術室に入り、麻酔をかけられます。
- 他の臓器を傷つけずに、腎がんに届きやすいような体位をとります。腹腔鏡下手術の場合はポート(器具を出し入れする穴)を数ヵ所設置します。開腹手術の場合は皮膚を切開します。
- 腎がんの部分を切除、または、がんのある腎臓を摘出し、周囲に進展があればその切除を行います。
ポートや開腹部位を縫うなどして閉鎖します。
- 切除した組織を用いて、がんが取り除けているかどうかを確認するための病理検査が行われます(結果が出るまでに数日かかります)。
- 術後、合併症などの問題が発生しなければ、食事やシャワー、リハビリを順次開始し、抜糸します。
手術から1週間程度で退院となります。
手術の合併症 |
腎がんの手術に伴う可能性がある合併症として次のものがあります。
- 手術中の出血
- 術後出血
- 腎臓周辺の臓器の損傷
- 尿漏れ
- 腸閉塞
- 感染
- 肺梗塞 など
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②経皮的局所療法(経皮的凍結療法) |
体外から専用の細い針で病変部を刺し、がんを壊死させる治療法です。
4cm以下の腎がんで、高齢の方や腎機能が低下した方、心疾患系の疾患を有する方など、手術が難しいと考えられる方に対して行われます。また、手術後の再発例で適用されることもあります。
局所麻酔下にて行われ、傷痕が小さく出血も少ない体の負担が少ない治療法です。
経皮的局所療法には凍結療法(Cryoablation) があります。
凍結療法 |

凍結療法に伴う可能性がある合併症には次のものが報告されています。
- 後腹膜出血
- 血尿
- 膀胱タンポナーデ
- 腎臓周辺の臓器の損傷
- 疼痛
- 発熱 など

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③薬物療法 |
がんが大きい、転移している場合、手術前に薬物療法でがんを小さくしてから手術が行われることがあります(術前補助化学療法)。
また、手術で切除しきれなかった微小ながんが残っている可能性がある場合や、転移がんの再発予防が必要な場合には、手術後にも薬物療法が行われることがあります(術後補助化学療法)。
術前の補助化学療法には分子標的薬が使われますが、効果が不十分な場合には免疫療法が行われることもあります。


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④放射線療法 |
がんが脳に転移した場合、放射線療法が行われることがあります。また、骨に転移したがんによる痛みの緩和を目的に行われることもあります。
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➄監視療法 |
直径4cm以下の小さながんに対し、すぐに手術を行わず、造影剤を用いた検査などを定期的に行って経過を観察する方法です。
高齢者や合併症が多い方に対し、過剰な治療を避ける目的で行われることがあります。