前立腺肥大症通信 No.4

初期の前立腺肥大症には薬物療法も有効な選択肢。
症状の緩和に効果的な薬物も開発されています。 

「勤勉家」にあって、「ナマケモノ」にない?前立腺をめぐるトリビア。

前立腺は英語で“prostate”と表記します。これは、精嚢の前に存在するというギリシャ語“pro(前に)+states(立つもの)”が語源とされています。日本では古来、前立腺の機能を尿道や精子を守るという意味で「摂護腺」と呼んでいたこともありますが、現在では英名“prostate”の直訳を当てはめて、「前立腺」と呼ぶようになりました。
前立腺肥大症通信 No.3で、犬の前立腺肥大症についてご紹介しましたが、前立腺があるのは哺乳類だけです。鳥類、爬虫類、両生類などにはありません。でも不思議な事に、哺乳類の中でも「鯨」や「ナマケモノ」には前立腺がないそうです。「鯨」と「ナマケモノ」、この両者になんら脈絡がない事も、実に不思議です。 

薬による前立腺肥大症治療とは?

前立腺肥大症の症状が軽い初期段階の治療法としては、主に薬物療法が選択されます。症状が重い場合は、薬による治療だけでは不十分ですが、排尿困難などの症状緩和に効果的な薬も増えてきました。それらは以下の3つのタイプに大きく分かれています。

1. 薬物療法のエース“α1ブロッカー”
前立腺肥大症における排尿障害発生のメカニズムは、次の通りです。

  1. 前立腺が肥大すると交感神経が緊張しやすくなる。
  2. その交感神経の末端からアドレナリンが放出され、これが前立腺内の平滑筋内部に存在する「α1受容体」に作用する。
  3. 「α1受容体」が前立腺内の平滑筋を収縮させ、尿道が狭まる。

このメカニズムに注目し、「α1受容体」の働きを抑えることで、前立腺内の平滑筋がゆるまり、尿を出やすくする薬が“α1ブロッカー”です。比較的効果が早く表れやすい薬であり、長期間服用しても効果が維持されやすいことが特長です。ただし、この薬は元来高血圧の薬として開発されたため、立ちくらみやめまいなどの副作用が表れる場合もあります。

2. 前立腺そのものを小さくする“抗男性ホルモン薬”
前立腺が肥大していく主な原因として、男性ホルモンが深く関与していることが解明されています。この男性ホルモンを抑える“抗男性ホルモン薬”は、肥大した前立腺に対して直接働き、その大きさを1~2割ほど縮小する効果があります。ただし、IPSSで診断されるような症状については、十分改善されない場合も多く、現在では“α1ブロッカー”などをはじめとする他の薬との併用するのが一般的です。副作用として、ED (勃起障害)や乳房の女性化など、男性ホルモンが抑制された結果に起こる症状が認められることもあります。

3. その他 植物エキス、“漢方薬”など
排尿困難や頻尿、むくみなどの症状改善に、植物製剤、漢方薬、アミノ酸製剤が用いられる場合もあります。ただし、根本的に肥大した前立腺を縮小させる効果はありません。

薬物療法 or 手術 ― その選択は?

身体への侵襲性または費用の面での負担が小さいと思われる薬物療法ですが、治療が長期に渡る場合には、結果的に手術より治療費が多くかかってしまうケースもあります。
治療方法は症状やその程度だけではなく、年齢や体力、病歴、家族など患者さんの状況を医師が総合的に診断し、選択肢をアドバイスします。その上で、薬物療法か手術かの選択は、最終的に患者さんの意思によって決定されます。 

監修:
国際親善総合病院 院長
村井 勝先生