前立腺肥大症
News Letter No.3

レーザー光で肥大した腺腫を蒸散させる治療法「HoLAP」
低侵襲で、出血や痛みが少なく、入院期間も一泊二日程度 

50歳以上の中高年男性の5人に1人といわれる前立腺肥大症ですが、「年のせいだから、仕方がない」と我慢する人も多く、その大半は潜在化していると考えられます。また、前立腺肥大症は軽視されがちですが、夜中に何度もトイレに起きる、尿の切れが悪いなど生活の質(QOL)を低下させるだけでなく、症状が進むと尿閉や腎不全などになる恐れもあります。初期の段階では薬物による治療法が選択され、症状が進行している場合は、経尿道的前立腺切除術TURP)、レーザー手術法等が行われます。今回は、低侵襲で体への負担が少ないレーザー手術法、中でも「ホルミウムレーザーによる前立腺蒸散術(HoLAP:ホーラップ)」を紹介いたします。 

メスを使わない低侵襲なレーザー手術法

レーザー手術法とは、尿道から内視鏡を介してファイバーを患部まで挿入し、レーザー光を照射して腺腫を核出または蒸散させる治療法です。使用しているホルミウムレーザーは水への吸収率が高いため、水で満たされている尿道や膀胱内はレーザー光が他の組織に影響を与えることなく照射できます。さらにレーザー光は腺腫を取り除くと同時に止血を行うことがことができるため、外科手術や電気メスによる治療に比べて、出血や痛みが非常に少ないのが特徴です。よって、身体への負担は小さく、入院期間や完治までの期間も短くすみます。前立腺肥大症のレーザー手術法には、肥大した腺腫をレーザー光で切り離すHoLEP(ホーレップ:前立腺核出術)と、レーザー光で腺腫を蒸散させるHoLAP(ホーラップ:前立腺蒸散術)の二つの治療方法があります。 

HoLAP ― イメージは雪が消えていく感じ?

レーザー治療というと非常に難しく感じますが、ここで冬の積もった雪をイメージしてください。雪かきの時は、スコップで雪に四方に切れ目を入れてブロック状にし、それをスコップですくい上げて除去します。例えるならこれがHoLEPです。これはよくみかんのひと房を皮からはがすようなイメージとしても説明されます。これに対しHoLAPは雪の上にお湯をかけるとその部分の雪が蒸発して消えていく、例えるなら、そのようなイメージです。実際のHoLAPの治療法に当てはめると肥大部分(雪)にレーザー光(水)を照射して(かけて)肥大組織を蒸散する(消す)ということになります。このようにレーザー治療の中でもHoLAPは非常に短時間で行え、術後の入院期間も短く、より低侵襲な治療法と言えます。先にも触れたように電気メスなどを使う治療と違いHoLAPはほとんど出血することもありません。TURPの場合の入院期間は3~7日ですが、HoLAPの場合は、一泊二日程度から、施設によっては日帰り手術も可能です。HoLAPは、比較的小さな腺腫(約50g)の場合に適しています。 

監修:
東海大学医学部外科学系 泌尿器科学教授
寺地 敏郎先生