患者、術者、医療施設ともにメリットをもたらす
MOSES™ Technologyの可能性 Advanced編

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尿路内視鏡手術 中~上級者へ贈る
“20mm以上の結石”に対するf-URSの可能性

「患者、術者、医療施設ともにメリットをもたらすMOSES™ Techonologyの可能性」で従来のホルミウムレーザー治療装置とは異なる気泡形成が可能なLumenis Pulse 120H Holmium laser system with MOSES™ Technology(以下MOSES™ Techonology)を導入したことによる、手術時間短縮やSFR(Stone Free Rate)などの臨床面におけるメリットに引き続き、アドバンスド版として、再び今井聡士先生(甲南医療センター泌尿器科)から尿路内視鏡手術(RIRS/f-URS)中級~上級術者に対しての話題を提供していただいた。
 甲南医療センター
 泌尿器科 医長
 今井 聡士 先生
 

はじめに

尿路内視鏡手術(RIRS/f-URS)は、尿管鏡の細径化、Ho;YAGレーザーの発生装置の性能向上、single use の尿管鏡の登場などのデバイスの進化によって日本でも広く行われるようになってきた。本邦では2015年に体外衝撃波結石破砕術(ESWL)の症例数を抜いており、今やf-URS全盛時代を迎えたとも思えてくる。
各国のガイドラインでは、結石がどの位置、どのサイズであってもf-URSが第1選択肢または第2選択肢となっている。周知のとおり海外では、たとえば、Cancer Centerのような疾患別に症例を集約した専門性の高い医療体制をとっており、その中でも“endourology”(泌尿器内視鏡)はひとつの大きな領域として認知されている。一方、日本の泌尿器科医においては、泌尿器科領域すべての手術が一通りできることが目標とされることで、10年目くらいまではロボット手術、腹腔鏡手術、開腹手術などに追われ、泌尿器内視鏡については「ある程度できれば」…と二の次にされることも少なくないと思われる。
日本の泌尿器科におけるこのような背景を考えると、1人の医師に症例を集中させて修練を積むことはなかなか難しく、指導に当たっておられる先生もご苦労されていることと推察される。
 

f-URS中級~上級者の術者に向けての提言

では、「ある程度はできる中級者」とは、どの程度のレベルのことを指すのであろうか。もちろん、こうしたことに定義はないが、Skolarikosらは「尿管鏡操作(f-URS)のラーニングカーブは比較的長く、手技が安定するまでには50~60例の執刀経験が必要」と報告している1)。私は個人的には「endourologyを得意とする指導医からの多少の助言をもらいつつも、自身で手術を完遂し、撤退の判断もできれば中級者と言えるだろう」と考えている。
米国泌尿器科学会(AUA)、欧州泌尿器科学会(EAU)、日本泌尿器科学会(JUA)それぞれのガイドラインにおいて、20mm以上の結石に対するゴールデンスタンダードはPNLとされているが、患者ADL、併存疾患、リスク、患者の希望などにより、第2選択としてf-URSでの治療も推奨されている。
Omarらによる結石サイズ20mm以上に対するf-URSのシステマティックレビューの中で、結石サイズ20~30mm(n=162)では、治療回数1.46回、完全排石率(stone free rate:SFR)95.7%、マイナーな合併症発生率14.3%、メジャーな合併症発生率0.0%であった2)。PNLと比較して手術回数はやや多いものの、SFRは高く、合併症も少ないため、f-URSの治療成績は向上してきていることがわかる。
我々も自施設での治療成績を検討した。2018年12月~2021年2月の期間に当科にて20~30mmの腎結石に対し外科的治療を行った46例〔f-TUL20例、経皮的経尿道的同時砕石術(ECIRS)26例〕について、患者背景、手術成績、周術期合併症について比較検討した結果を紹介する。両群の患者背景と結石背景に有意差は認められていない(表1)。
表1:f-TUL群とECIRS群の患者背景と結石背景
 
■ 我々のf-URSの手技の流れ 
我々のf-URSの手技の流れを以下に紹介する。

当院における20~30mm結石に対するf-TULの手術手順

  • 膀胱鏡を用いてセーフティガイドワイヤーを挿入
  • 半硬性尿管鏡で可及的頭側まで尿管を観察(+尿路造影)
  • 尿管の太さに合わせて尿管アクセスシース(UAS)を挿入
  • 軟性尿管鏡を選択(Lithovue or reusableURS)
  • レーザー発生装置(Lumines120W)を用いて、MOSESTM MODEをメインに使用し砕石
  • シース径に合わせたサイズに砕石し、バスケット鉗子にて抽石を行う。
  • 全90分の手術時間の残り時間に応じてDusting techniqueで細かく破砕し、尿管ステントを留置し手術終了する。
今回使用したUASと軟性尿管鏡について下に示す。
 

 

当院では下極結石、結石硬度が高く、抽石回数が多くなると予想される症例を中心にLithovueを使用している。
 
■ ECIRSの手術方法 
続いて我々のECIRSの手技の流れを紹介する。

当院におけるECIRSのトラクト作成手順

  • 膀胱鏡を用いてセーフティガイドワイヤーを挿入
  • 半硬性尿管鏡で可及的頭側まで尿管を観察(+尿路造影)
  • 尿管アクセスシース(UAS)を挿入(11/13F or 12/14F)
  • 軟性尿管鏡で穿刺腎杯の観察
  • US(eFLOWモード併用)にて穿刺腎杯決定
  • 22G US穿刺針にて腎杯穿刺(軟性尿管鏡にて穿刺部位、動脈性出血の有無を確認)
  • シリコンチューブからガイドワイヤーをUAS内に落とし込みthrough & throughとする。
  • ダイレーターで12Fまで拡張し2本目のガイドワイヤー(セーフティガイドワイヤー)を留置。
  • UAS内にあるthrough & throughのガイドワイヤーを用いてトラクトを作成する。
  • 腎盂鏡は全例mini-Percを用い、Ho;YAGレーザーを使用しバスケット鉗子で抽石する。

 

 
 
検討の結果、手術時間においてf-URS群が119分(63~161分)、ECIRS群が165分(98~185分)であり、f-URS群のほうが有意に短いとの結果が得られた(p=0.02)。平均手術回数はそれぞれ1.25回、1.38回で有意差を認めなかった。(p=0.62)
術翌日の腎尿管膀胱撮影(KUB)で<2mmを早期SFRとすると、f-URSで75%(15/20例)、ECIRSで72%(19/26例)。術1ヵ月後ではそれぞれ92%(18/20例)、100%(26/26例)と、それぞれ共に良好であった。
周術期合併症はf-URS群の1例に発熱を認めたのみであった。f-URSは安全に施行できており、治療成績、安全性に関しても良好な成績を得ることができたと言える(表2)。
表2:f-TUL群とECIRS群の手技時間と治療結果
 

症例によっては2cm以上の結石でもf-URSが選択肢に

もちろん、術者の技量、手術室の環境、手術機器やデバイスによっても治療成績は大幅に変化する。また、20mm以上の結石に対する治療はPNL/ECIRSが第一選択であることには異論はない。しかし、症例によってはf-URSの方が良好な結果を得られる症例もあると考えられる。PNL/ECIRSに慣れている施設であればよいが、そもそも20mm以上の結石の症例数が多くないことや、PNL/ECIRSのご経験が少ない場合、年間数例のPNL/ECIRSを行うよりはf-URSを行うほうが安全となる症例もあるのではないだろうか。
各施設で無理をする必要はなく、high volume centerに紹介すればよいが、若くADLの良好な患者さん、今後も再発の可能性が高い患者さんに対しては、ご自身の慣れているf-URSでの治療を選択してもよいと考えている。
理由としては、①今回の我々の検討では周術期合併症はf-TULと比較しECIRSより少なく成績は同等であった、②f-URSにより、肥満など高難度の穿刺を回避できる、③MOSESTM Techonologyを使用することにより、より細かくdustingができるため、以前よりも多少微細な破砕片が残存したとしても自然排石が期待できる、④複数回のPNL/ECIRS治療後の穿刺は瘢痕化して難度が上がっていくため再発の可能性の高い患者に将来の複数回穿刺が避けられることが挙げられる。
その中でも腎盂内で嵌頓している、下腎杯の20mm以上の結石患者に対しては特に、単回使用の軟性尿管鏡を使用するほうが軟性鏡破損のリスクを低減させることができ、reusable URSを使用し破損した際の修理費をセーブできるかもしれないため是非検討していただきたい。
 

f-URS術中の注意点

術中の注意点としては、手術時間の制限からおのずとhigh frequencyでのdustingテクニックが必要となる場面も多く、その結果、dustの中に結石が埋もれてしまい、思わぬ大きな破砕片が残存することである。これを防ぐために、よく腎盂内を洗浄して見落としがないかの注意が必要となる。また、下腎杯のdustはSFRの画像評価も困難であることで、なかなか排石されず、それが再発のきっかけになることも憂慮される。よく洗浄して腎盂に巻き上げさせておくこともポイントである。さらに、1回では砕石が終わらないと感じたときには、手術60分ほどで抽石を開始し、粘って中途半端な破砕片(5~8mm程)にせず、一塊の結石として残すことが重要である。そうしなければストーンストリートを作ってしまい、2回目の手術時間のうち尿管のstreetを形成した結石を抽石することに多くの時間を費やしてしまうことで、非常に効率が悪くなってしまうためである。
一塊の結石として残さなかったため ストーンストリートを形成し2度目のTULを要した症例
 

最後に

high frequencyでの砕石法を提唱するGhani先生によるWeb講演会3)ではGhani先生から「high frequencyは効率がよいが、やはり軟性鏡の操作の習熟度に合わせて徐々にHzを上げるようにすればよい」との意見をいただいた。米国とは異なる保険診療制度の本邦では、シースを使用せずにhigh Hzで破砕し、dustingで終えるような手術は必要ない。海外の著名な術者の手術動画を見ても「やはり日本人のほうが砕石、抽石を含め、細やかな手技が得意なようだ」と強く感じており、日本人には日本人なりにうまくミックスさせた砕石法を模索すればよいと考えている。
今回のJSURの結石診療ガイドライン改定を見ても、「20mm以上の結石に対する治療の第1選択はPNL、場合によりf-URSも可」という方針はおそらく変更されることはないようである。MOSESTM TechonologyやLithovueなどのイノベーションが治療成績向上の底支えをしていることは間違いない。基本的にはガイドラインを遵守しつつも、症例によっては選択肢としてf-URSが提案できるように日々技術を磨き、皆様と症例を蓄積して、よりよい術式を模索していきたいと考えている。本稿が皆様の診療のひとつのアイデアになれば幸いに存ずる。
 
Reference
1. Skolarikos A, Gravas S, Laguna MP, Traxer O, Preminger GM, de la Rosette J. Training in ureteroscopy: a critical appraisal of the literature. BJU Int 2011;108:798-805; discussion 805.
2. Omar M. Olivier Traxer,Bhaskar K. Flexible Ureteroscopy and Laser Lithotripsy for Stones > 2 cm: A Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of Endourology Volume 26, October 2012
3. James Tracey, Galina Gagin, R. Ghani et al. Ureteroscopic High-Frequency Dusting Utilizing a 120-W Holmium Laser. Journal of Endourology Volume 32, Number 4, April 2018
 
 

本資料は製品の効果および性能等の一部のみを強調して取りまとめたものではなく、製品の適正使用を促すためのものです
※径表示換算目安:1mm=3French=0.0394inches

販売名:Lumenis パルス 120H
医療機器承認番号:22800BZX00150000
製造販売業者:ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社

販売名:リソビュー 単回使用デジタルフレキシブルウレテロレノスコープ
医療機器認証番号:228ABBZX00104000