患者、術者、医療施設ともにメリットをもたらす
MOSES™ Technologyの可能性

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従来のホルミウムレーザー治療装置とは異なる気泡形成が可能なLumenis Pulse 120H Holmium laser system with MOSES™ Technology(以下MOSES™ Technology)を導入したことによる、手術時間短縮やSFR(Stone Free Rate)などの臨床面におけるメリットについて、甲南医療センター泌尿器科の今井聡士先生に語っていただいた。
 甲南医療センター
 泌尿器科 医長
 今井 聡士 先生
 

MOSES™ Technologyにより手技時間は有意に短縮

新型コロナ感染症禍の現在、尿路結石症の待機患者が増えており、新規患者の増加に加えて難易度の高い症例の増加が予見される。つまり、尿路結石症患者を「短時間で効果的に手術治療する」ことが、ポストコロナ時代の課題でありキーワードである。
エネルギーデバイスを使う破砕時間がより短縮できれば、患者にとっては身体的負担が軽減され、また、迅速に破砕できることで大きな結石でも短時間で治療できる可能性が出てくる。術者にとっては身体的負担とストレスが軽減される。医療施設にとっても手術件数増加などで手術室の効率的な運用が可能となり、術後合併症リスクが低減できるのであれば、加療に伴うコスト削減や効果的な病床運用も期待できる。まさに患者・術者・医療施設ともにメリットをもたらす「三方よし」に結び付く。
MOSES™ Technology を先行して上市している海外の研究を見ると、従来のホルミウムレーザー治療装置による破砕(通常モード)と、一度の照射で2つの気泡を形成するMOSES™モードによる破砕を比べた二重盲検前向き比較試験の結果、MOSES™モード群は、通常モード群に比べて、砕石時間、手技時間、結石の動き(retropulsion)の程度が有意に減少し、砕石時間が短縮したことで手術時間が約20%短縮できたとの報告もある (図1a)1)
当院でもMOSES™ Technology 導入前後の72例について単一術者である私の手技と成績比較した結果、MOSES™モードは、通常モードに比べて、手術時間および、尿管アクセスシース(UAS)留置時間はいずれも有意に短縮した。また、術後の尿管ステントを留置しない症例は19%増加し、術翌日のSFR(Stone Free Rate)も13%増加して92%と高まっており、いずれも有意な差となっている(図1b)。
 
図1a:MOSES™ Technology導入による手技時間と治療成績の推移
 
従来のホルミウムレーザー治療装置(通常モード)と MOSES™モードを比べた二重盲検前向き比較試験(Ibrahimら)1)
 
図1b:MOSES™ Technology導入による手技時間と治療成績の推移
 
MOSES™ Technology導入(2019年8月)の前後8ヵ月間(2018年12月~2020年5月)に単一術者(今井先生)が施行したTUL72例を導入前後の2群に分けての比較
 
 

手技時間短縮の3つの理由

MOSES™ Technologyによる手技時間の短縮の理由として、Good View(良好な視野)、To Design(思いのままの砕石)、Safety(安全性)が挙げられる。
 

Good View(良好な視野)

従来モードによるdustingでは、しばしばダストが舞って視野が遮られ、手技を中断せざるを得なかった。MOSES™モードでは砕石ダストの粒子が小さくなるためか、視野を十分に保ちながら砕石を続けることができる。アクセスシースから流れるダストを見ても、非常に細かく砕かれている。
 

To Design(思いのままの砕石)

MOSES™モードでは、あたかも宝石をカッティングするかのように結石周囲の角を削ることができ、結石の真ん中に線を入れて切れ目を作り、狙った大きさにすることもできる(図2a)。また、大きな結石に対して、中心部に穴を掘り、すり鉢状に砕石した後にshort パルスに切り替えて、fragmentingすることもできる(図2b)。つまり、術者がデザインしながら砕石できることが大きなメリットである。結石の大きさ・形をコントロールしつつ砕石回数を最小限に抑えることで、ミスショットによる患者負担を軽減しつつ迅速な抽石を行うことで、手術時間の短縮を図ることができる。
図2:To Design
 

Safety

嵌頓結石例では尿管壁近傍で照射せざるを得ない場合が少なくない。MOSES™モードはshort pulseやlong pulseと比べて直線的に掘れることで側方への影響が少なく、介在部に負担をかけずに中心部を砕石できる。また、やむなく辺縁に照射する場合でも粘膜への損傷は少なく済み、出血量は少ない。これまでに術後の尿管狭窄例は経験していない。
 
Good View 1
Good View 2
To Design 1
To Design 2
Safety
 
 

新たな手技“High frequency dusting”の可能性

MOSES™ Technologyによる新たな手技として、高いHzと低いパワーでdustingを行い、抽石を行わずに終了する“High frequency dusting”が注目されている2)。0.2J×80Hzで開始し、硬ければジュール(J)を上げ(0.3~0.5J×80Hz)、軟らかければHzを下げて(0.2J ×50~70Hz)dustingを行う。報告にある平均手術時間53分、アクセスシースの使用率21%、SFR(≦2mm)74%の成績もまずまずと言える。合併症も少ないとの報告である。
私も数例にHigh frequency dustingを行い、硬い結石が容易に割れて視野も非常によいとの感触を得た。ただし、thermal effectによる粘膜損傷も懸念されており、高い出力でレーザーを照射し続けないように注意が必要である。
 
 

最後に

このように、MOSES™ Technologyの臨床面における効果については手術時間短縮、SFR向上から十分に実感できた。今後はHigh frequency dusting の効果的な取り扱いに加えて、より小さな砂状に残った結石が中長期的な患者予後にどう影響するか、また、コスト削減など定量的な評価による医療施設のメリットについて検証されることに期待したい。
 
Reference
 1, Ibrahim A, et al. Double-Blinded Prospective Randomized Clinical Trial Comparing Regular and Moses Modes of Holmium Laser Lithotripsy. J Endourol 2020; 34: 624-28.
 2, Tracey J, et al. Ureteroscopic High-Frequency Dusting Utilizing a 120-W Holmium Laser. J Endourol 2018; 32: 290-95.
 
 
 

本資料は製品の効果および性能等の一部のみを強調して取りまとめたものではなく、製品の適正使用を促すためのものです
※径表示換算目安:1mm=3French=0.0394inches

販売名:Lumenis パルス 120H
医療機器承認番号:22800BZX00150000
製造販売業者 : 株式会社日本ルミナス