Lumenis Pulse 120H with Moses Technologyはこう使う!
レーザー特性を考慮したTUL治療
基礎編② 破砕テクニックと設定モード
本稿では患者さんの状態に応じた治療を可能とする破砕テクニックとして、MOSES120によるDusting、Fragmenting、Popcorningと、それぞれの設定モードについて、引き続き加藤先生に解説していただいた。
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坂泌尿器科病院 診療部長・泌尿器科長 尿路結石治療センター長 加藤 祐司 先生 |
はじめに
当院で使用していた従来のレーザー装置(Lumenis Power Suite 100W)での出力設定は、Dustingはlow power/high frequency(0.2~0.5J/30~50Hz)、Fragmentingはmedium power/low frequency(0.5~1.0J/5~10Hz)、Popcorningはhigh power/medium frequency(1.0~1.5J / 15Hz以上)としていた。
MOSES120における設定モードとテクニックについて解説する。
A) Dusting
PNLでも経尿道的膀胱砕石術でも基本的な条件設定は同じだが、治療対象となる結石はTULよりも大きく硬い場合が多く、砕石効率を上げるためにヘルツは高めに設定する。
MCはレーザーの影響が及ぶ範囲が非常に狭いため、効率的にDustingするには、結石の表面を撫でるように内視鏡を連続的に滑らかに動かすscope workが重要となる(scope workに関しては動画を参考にしていただきたい)。
大きな結石は動きにくいが、小さくなってくると動きやすくなり、レーザーのfocusingがやりにくくなる。この場合はジュールやヘルツを下げて対応するが、もともとDustingは小さな結石には不向きな砕石方法であることに留意する。
Dustingと結石成分・Fragility
シュウ酸カルシウム一水和物(COM)やシスチン結石のような硬い結石であってもDustingは問題なく施行可能であり、これらの結石の構造が均一的であることから、予想外に大きく壊れることは少ない。一方、シュウ酸カルシウム二水和物(COD)のような構造が粗な結石は少しの衝撃力で大きく壊れることがある。このため、低いジュールから開始すること、結石の中央ではなく辺縁から壊すことを心がける。
尿酸結石は最もDustingに向いた成分であり、非常に細かなパウダー状にすることが可能である。尿酸結石はクエン酸製剤や重曹による経口的な尿アルカリ化で溶解されるため、結石を細かく砕石すると、その後の溶解方法で完全なstone freeを達成することが可能である。
Dustingの注意点
- 砕石した砂や細かな粒子によって、腎内の灌流液が“吹雪”のように視界が不良になることがあり、大きな結石をDustingする場合には、腎盂まで届く長さのアクセスシースを選択する、事前に腎瘻を留置する、貯留した灌流液を適宜抜くなどして灌流の質に気を配る必要がある。
- Dustingは尿管のような狭い空間では、①Dustingの肝であるscope workが困難である、②結石の周囲組織に影響を及ぼす可能性があることから、基本的には施行しないほうがよい。
結石に軽く接触させながら連続的に細かく砕石する。結石の表面を撫でるように滑らかに動かすscope workが重要。
レーザ設定:MC 0.4J*40Hz
B) Fragmenting
Fragmentingで考慮すべきことは、結石サイズ、硬さ・構造、動きやすさである。フットスイッチの1つをMC、もう1つをSPに設定する。初期条件はMC、SPどちらも0.4J×5Hzを基本としている。結石の硬さ・壊れやすさを見てジュールを上げる。TULでは1.0Jを越えることはまれである。
ファイバーを結石にギリギリ非接触の状態まで近づけることで結石にパワーが伝わりやすいと言われている。しかし実際には、COD結石のようなもろく壊れやすい結石以外では非接触でretropulsionを回避しながら砕石することは難しい。この傾向は特に小さな結石で顕著である。
Retropulsionしやすい結石
Retropulsionしやすい結石をFragmentingする場合は、MCでレーザーを当てながら結石に近づき、表面に窪みや穴を作成する。この“傷”を利用して、ファイバーを引っかけ結石を押さえ込めたらスイッチを踏み換えSPで壊す。瞬間的に大きなパワーが作用するSPの性質によって大きくクラックが発生し、ブロック状に砕石される。例えるなら岩盤にダイナマイトを差し込む穴を(MCで)空け、(SPで)爆発させて破壊するイメージである。
従来機種ではRetropulsionしやすい結石はファイバーで結石を押さえつつ砕石していたが、COMなど表面が平滑で角がない結石では転がりやすく、ファイバーで押さえるのに難渋することが多かったことを考えると、MOSES120では非常に効果的にFragmentingが可能である。
Retropulsionしにくい大きな結石
一方、大きな結石に対してはMC単独でのFragmentingは、ピンポイントにしか壊せず、砕石効率が悪いため、前述したようにMCとSPを組み合わせて砕石する。結石をやみくもに壊すのではなく、“石を切る”イメージで、壊したい部分の結石表面にMCで溝を作成し、SPに切り替えて照射すると、溝に沿うように大きく砕石される。
小さな結石
小さな結石をさらに小さくFragmentingする際は、MC単独で行ったほうがRetropulsionしにくく、やりやすい。ただし、MCではクラックが入らず結石に穴が空きやすいため、結石の反対側に貫通して、その先の組織にレーザーが当たらないように注意する。
MOSES120によるMC/SP Fragmentingに慣れると、任意の大きさの砕石片をデザインしながら作成することが可能となる。換言すると、抽石の際にシースや尿管でスタックしないジャストサイズの、粒の揃った砕石片を作ることが可能である。
結石をブロック状に壊す。Retropulsionしやすい結石では表面に作った窪みにファイバーを引っ掛け、結石を押さえ込んでSPで破壊する。
レーザ設定:Left: MC 0.5J*5Hz; Right: SP 0.5J*5Hz
C) Popcorning
出力は0.5~0.8J/50Hz 前後とし、組織に接触しないように砕石片の近くにレーザー先端を置き、10~30秒間の連続照射を繰り返す。パワーを上げすぎると飛び散る力が発生しやすいため、パワーは抑え気味の方が“誘蛾燈”効果を狙いやすい。
Popcorningの多くは腎杯に溜まった砕石片に対して行うが、Dustingと同様の理由から尿管などのスペースのない所では行わない。
Popcorningと結石成分・Fragility
構造が粗でもろいDustingしやすい尿酸結石ではPopcorningは非常に有用である。MD Popcorningは従来モード(SPやLP)のPopcorningよりも、渦が発生している分だけ、早く小さな粒子にすることが可能である。
一方、COMなどの硬い結石ではPopcorning効果が十分に得られないことがある。硬い結石を含む場合は、フットスイッチの1つをMDのPopcorningの設定とし、もう一方をMCのFragmentingの設定としておく。
Popcorningの最中にpopしにくい大きめの砕石片を見つけたら、フットスイッチを踏み換えてMCでピンポイントにFragmentingし、小さく砕石してから再びPopcorningを行う。これを繰り返していくと砂状の砕石片だけが残り、術後の排石時にstone street の起点となるような大きい砕石片を見逃さずに済む。
連続的にレーザーを照射し水流(渦)を作り、結石どうしをぶつけて砕石する。多くは腎杯に溜まった砕石片に対して行う。
レーザ設定:MD 0.5J*50Hz
まとめ
破砕テクニック動画一覧
結石に軽く接触させながら連続的に細かく砕石する。結石の表面を撫でるように滑らかに動かすscope workが重要。
レーザ設定:MC 0.4J*40Hz
結石をブロック状に壊す。Retropulsionしやすい結石では表面に作った窪みにファイバーを引っ掛け、結石を押さえ込んでSPで破壊する。
レーザ設定:Left: MC 0.5J*5Hz; Right: SP 0.5J*5Hz
連続的にレーザーを照射し水流(渦)を作り、結石どうしをぶつけて砕石する。多くは腎杯に溜まった砕石片に対して行う。
レーザ設定:MD 0.5J*50Hz
※径表示換算目安:1mm=3French=0.0394inches
販売名:Lumenis パルス 120H
医療機器承認番号:22800BZX00150000