Lumenis Pulse 120H with Moses Technologyはこう使う!
レーザー特性を考慮したTUL治療

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基礎編① レーザー特性

Lumenis Pulse 120H with Moses Technology(以下MOSES120)は、従来のホルミウムレーザー治療装置とは異なる気泡形成が可能なモード(MOSESモード)に加えて、広範な設定が可能である。MOSES120を用いて、数多くの結石治療と前立腺肥大症治療を行ってきた加藤祐司先生に、MOSES120の特徴とTULで最大限に使いこなすための要点について解説していただいた。また、レーザーの基本特性に関しては、金沢工業大学 杉本康弘教授に監修していただいた。
- 報告 -
坂泌尿器科病院
診療部長・泌尿器科長
尿路結石治療センター長
加藤 祐司 先生
    - 監修 -
金沢大学
工学部 機械工学科 教授
杉本 康弘 先生
 

はじめに

Lumenis Pulse 120H with Moses Technology(以下MOSES120)では、結石を破砕する衝撃波を作り出す気泡形成において、5つのパルスモード(2つのMOSESモードと、3つの異なるパルス幅:Short Pulse、Medium Pulse、Long Pulse)の選択が可能である。まずは、このモードの違いについて理解することが、臨床現場で患者さんの状態に応じて使いこなす第一歩であると考える。
 

A) 結石破砕のメカニズム(図1)

多くの術者が、ジュールを変えていくことで、結石を破砕するパワーが変わっていくことは体感しているであろう。このメカニズムを解説すると、操作パネル上のジュールは、あくまでもレーザーコンソール内でのレーザーエネルギーである。それがレーザーファイバーに伝わり、レーザーファイバー先端から灌流液に伝わった瞬間に気泡を形成する。そして、その気泡が崩壊することで、衝撃波(衝撃力)が生まれ、結石に伝わり、破砕される。

つまり、いかにコンソールで作られたレーザーエネルギーを効率よく灌流液に伝え、いかに効果的な衝撃波を作り出す気泡を作り出して結石に伝えるかが、破砕効率に直結する。前者はレーザーファイバーのエネルギー伝達率に依存し、後者は一般的にパルス幅に依存する。MOSES120では、MOSESモードでピークパワーも変化させることで、特異な気泡を形成し、効果的な衝撃波を生み出している。

異なる機種のホルミウムレーザー治療装置を使ったことがある術者には、同じジュールで割れ方の違いを感じることも少なくないだろう。これはメーカーによるレーザーファイバーのエネルギー伝達率の違いや、機種固有のパルス幅の違いに起因しているため、機種固有の特性を理解することは、臨床上でも重要である。

図1 ホルミウムレーザーが灌流液下で衝撃力を産み出すメカニズム
 

B) パルス幅

パルス幅は、その単位がμsec(マイクロ秒)であることから、換言するとレーザーを照射している “時間”を意味する。模式的に考えると、照射あたりのレーザーエネルギー(J:ジュール)は、ピークパワー(W:ワット)とパルス幅[時間(μsec)]の積となる。

同じレーザーエネルギー/ジュールのShort Pulse(SP)とLong Pulse(LP)を比較すると、SPはピークパワーが大きくパルス幅が短いのに対し、LPはピークパワーが小さくパルス幅が長くなる(図2)。

結石を壊す力に関係するのはピークパワーと考えられ、同じジュールの場合にはLPよりもSPの方が砕石力は強いことは臨床的に体感できる。この傾向はジュールが上がるほど顕著になり、同じジュールならLPはSPの70%程度のパワーであることが感覚的に理解できる(例:SPで0.5ジュールで砕石可能な場合でもLPでは0.8ジュール程度まで上げないと壊れない)。

一方でLP はSPよりもレーザーによる結石の動き(Retropulsion)が若干少ないことも体感される。

臨床現場で使っているホルミウムレーザー治療装置の可変パラメーターを考えると、破砕力(ピークパワー)を高めるために、 レーザーエネルギー(ジュール)をパルス幅[時間(μsec)]で割る式で覚えた方が効果的かもしれない(図3)。LPでもジュール を上げればRetropulsionはしやすくなるため、Retropulsionを抑えて砕石したい場合には、後述するMOSESコンタクトモー ドを使用した方がよい。

図2 パルス幅の基本概念

図3 破砕力(ピークパワー)の方程式
 

C) MOSESモード

MOSESモードは、1回のレーザー発射時に2つのパルス(気泡)を連続して発生させている。それぞれの気泡はShortPulseに近い形状とされる。また、MOSESモードには2種類あり、1発目の気泡が小さく、2発目が大きいMOSESコンタクトモード(MC)と、1発目が大きく、2発目が小さいディスタンスモード(MD)がある(図4)。

MCの臨床上の特徴は、①レーザー照射方向に“錐のように”ピンポイントに力が作用する、②5つのレーザーモードの中で最もRetropulsionが起きにくい、の2点である。MCの結石治療における優位点は、この2つの特徴によって結石を“壊したい所だけ壊す”ことができ、従来のレーザー装置や他のモードでは難しい“デザインしながら砕石する”ことが容易な点である。

一方、MDではRetropulsionはMCよりも生じやすい。MDの特徴は、広いエリアで連続してレーザーを照射すると、レーザー先端付近に気泡が結成され、誘起される水流(渦)によって破砕片が加速して移動する。また、砕石片がレーザーの先端に“誘蛾燈のように”集まる動きをすることが実験的に確認されている。

これは1発目の大きなバブルが収束する際に周囲のものがより引き寄せられ、2発目が発射されるといったメカニズムによるものと考えられる。この特徴は、特定の結石を狙い打ちするような砕石方法ではなく、後述する不特定の多数の小さな砕石片を狙い打ちしないで、互いをぶつけ合ってさらに細かくするPopcorningに応用可能である(詳細に関しては「基礎編②」および「臨床編」で記述する)。

図4 MOSESモードは1回のレーザー発射時に2つのパルス(気泡)を連続して発生させている
 
 
 
 

パルス幅 × 気泡サイズ × 衝撃力

Short Pulse(SP)、Medium Pulse(MP)、Long Pulse(LP)での気泡の挙動(形成・崩壊)の様子を示す。
気泡の挙動は高速度ビデオカメラで撮影したものであり、時系列に表示している。
ここではレーザーエネルギーを1.0ジュールに設定した際の1パルス当たりの気泡の挙動を示している。

図5 SP(上)、MP(中)、LP(下)の気泡の挙動
 
SPにおいては比較的球形に近い形状の気泡が形成されるが、LPでは細長い形状になり、同じエネルギーを供給したにもかかわらず、気泡サイズは小さくなる傾向を示した。ファイバーに対向する衝撃力をみると、SPはLPに比べて大きな衝撃が計測された。これは形成される気泡の大きさからも妥当な結果といえる。

図6 SP、MP、LPの衝撃力比較
 
LPでは動かないと体感するのは、発生する気泡が小さく、崩壊時の衝撃力が弱いためといえる。
LPではコンソールで発生したレーザーエネルギーが、気泡形成以外に、熱に多く変換されていることから、気泡周辺の温度上昇による組織への侵襲を気にする必要がある。詳細は「臨床編」にて解説する。
 
 

MOSESモードの気泡挙動

レーザーファイバーに対向する衝撃力では、近距離でレーザー照射する場合、MDの方がMCに比べて大きいことから、retropulsionが大きいと体感することがデータでも証明されている(図7)。気泡形成位置はレーザー照射方向 へ移動することがわかる(図8)。

図7 MCとMDの衝撃力の比較
 
図8 SP(上)、MC(中)、MD(下)の気泡形成位置の比較
 
 
 

本資料は製品の効果および性能等の一部のみを強調して取りまとめたものではなく、製品の適正使用を促すためのものです
※径表示換算目安:1mm=3French=0.0394inches

 販売名:Lumenis パルス 120H
医療機器承認番号:22800BZX00150000