アーティクルサマリー
BSCCI vol.7
石灰化病変におけるステント拡張を予測する
IVUSカルシウムスコア
背景
方法
結果
2011年から2019年にIVUSガイドPCI を受けた3415人3862病変のうち、308人328病変(病変群全体の8.5%)が研究対象となった。フローチャートを図1に示す。最終的に、A群(Derivation Cohort、n=97)、B群(Validation Cohort、n=97)、C群(Atherectomy Cohort、n=67)、D群(No Angiographic Calcium Cohort、n=67)となった。A 群とB 群では、最大デバイスサイズ以外の違いはなく、またB 群と比較して、C 群では血管造影上、重度の石灰化がより多く観察された。
IVUS所見では、B群(Validation Cohort)と比較してC群(Atherectomy Cohort)は、石灰化量は同程度であったが、PCI後のIVUSではCalcium Fractureが多かった(74.6% vs 51.5%、P=0.01)。D群では、ほとんどの石灰化の重症度パラメータがB群よりも低く、ステント拡張不良はわずか1.5%であった。A群(Derivation Cohort)において、石灰化>270°の長さ>5mm・最大石灰化部位の血管径<3.5mm・全周性石灰化(最大石灰化角度360°)、石灰化結節が最大石灰化部位でのステント拡張を予測する因子として算出され、回帰係数に基づき、IVUSカルシウムスコアを作成した(図2)。
ステント拡張不良(ステント拡張率70%未満)を予測するためのIVUSカルシウムスコアのカットオフ値は≧2であった(陰性予測値は0.94)。代表的な症例を図3に示す。図4は、各群におけるIVUSカルシウムスコア毎のステント拡張を示したものである。
IVUSカルシウムスコアは、B群(Validation Cohort:回帰係数、-8.1[95%信頼区間、-10.5~-5.7]、P<0.0001)、C群(Atherectomy Cohort:回帰係数、-4.8[信頼区間、-7.2~-2.5]、P<0.0001)においてもステント拡張不良と有意に相関し、Validation CohortとAtherectomy Cohortの間に有意な相互作用が認められた(P interaction =0.02)(図5)。D群ではIVUSカルシウムスコアが4の病変はなく、カルシウムスコアに関係なくステントの拡張は良好であった。ステント留置前のバルーンまたはアテレクトミー後の解析可能なIVUS画像が121病変あり、そのうち63病変でCalcium Fractureが認められた。これら63病変の最終的なステント拡張率は90.5±12.0%と良好であった。
考察
今回の研究の主な結果は、(1)重度( 石灰化角度>270°)の表在性石灰化を有する病変では、石灰化角度>270°の長さ・全周性の表在性石灰化(360°)、石灰化結節、血管径(<3.5mm)を含むIVUSカルシウムスコアは、表在性石灰化病変のステント拡張不良を予測することができる。(2)カルシウムスコアが2以上の場合、Orbital もしくはRotational atherectomyによるCalcium modificationが推奨され、ステント留置前に使用すれば、Calcium Fractureとステントの良好な拡張が期待できる。(3)しかし、血管造影上可視できる石灰化がない場合、広範囲な石灰化であっても(角度>270°)、ステント拡張不良とは関連がない。
ステント拡張不良は、ステント血栓症やステント内再狭窄と相関しており、急性期のステントの最適な拡張はPCIの最も重要な目標である。石灰化によるステント拡張不良を予防することは、 ステント留置後に石灰化に伴うステント拡張不良を治療するよりはるかに容易である。それゆえ、OrbitalもしくはRotational atherectomy、Lithotripsyを含むCalcium modificationが必要となるステント拡張不良のリスクが高い病変をステント留置前に特定することが重要である。
石灰化の総量(石灰化の厚さ、角度、長さ)はステント拡張に直接影響し、重度の石灰化病変におけるステント拡張の重要なメカニズムはCalcium Fracture の促進である。以前、我々が報告したOCTカルシウムスコアにおいて、最大石灰化角度>180°、最大石灰化厚>0.5mm、石灰化長>5mmの項目が組み合わされるとステントの拡張不良が起こることが示された。しかし、石灰化の角度が270°未満の病変を評価した場合、70%未満のステント拡張不良の頻度は7.8%に過ぎなかった。そこで、今回のIVUSカルシウムスコアでは、石灰化の角度>270°の病変に着目した。先に発表したOCTカルシウムスコア同様に、今回のIVUSカルシウムスコアの主な特徴は、石灰化の総量(>270°の長い石灰化と全周性石灰化)に関連するものであった。さらに、360°の全周性石灰化は、全周性ではない重度の石灰化病変とは大きく異なる。なぜなら、わずかな非石灰化プラークは、バルーンやステントによる解離を促し、血管の伸展をもたらす可能性があるからである。
石灰化結節(重度の石灰化プレートの上に突出した偏心的な石灰の塊)もステント拡張不良と関連していた。我々は以前、標的病変(特に冠動脈のHinge motion、右冠動脈、および慢性血液透析患者)における石灰化結節の有病率を4.2%と報告した。今回のように最大石灰化角度>270°の標的病変のみを対象とした場合、石灰化結節の有病率は31.9%であり、頻度としては低くなかった。Morofujiらは、Rotational atherectomyを必要とする重度石灰化病変の半数に石灰化結節があり、石灰化結節は石灰化結節のない病変と比較して5年の有害事象と関連していると報告している。
表層性石灰化は病変のNegative remodelingの予測因子であると報告されている。本研究では、Negativeremodelingの結果である重度石灰化部位の血管径がステント拡張に関連する重要な因子であることが確認された。また、Negative remodelingは非石灰化部位の伸展を制限する。 Rotational もしくはOrbital atherectomyはデバイスの通過困難な病変に対して最も有効な手段であるが、その有効性はワイヤーのバイアス、石灰化の分布、内腔の大きさに依存する。一方、血管内Lithotripsyは、腎臓結石の治療法として確立されているものと類似しており、局所的な衝撃波(Sonic Pressure Wave)を使用して石灰化を破砕するものである。血管内イメージング(OCTまたはIVUS)は、石灰化総量だけでなく、石灰化の分布に基づいてこれらの補助療法の必要性を特定することができる。
論文ポイント
- IVUSにおける石灰化角度が270ºを超える病変では、石灰化病変の長さ、全周性石灰化、石灰化結節、 血管径の所見に基づいてステント拡張不良を予測することができる。
- IVUSカルシウムスコアが高い病変にRotationalもしくはOrbital atherectomyを用いると、良好なステント拡張が可能である。
- 血管造影上確認できない石灰化は、ステント拡張を阻害しない薄いものであり、バルーン拡張のみで破砕できる。
承認番号・販売名
販売名:ロータブレーター
医療機器承認番号:20900BZY00356000
販売名:ロータブレーターPRO
医療機器承認番号:23000BZX00060000