食道バルーン拡張術に期待される効果と成績について

食道狭窄が原因で食事の摂取が制限されていた方も、拡張術を行うことで食事摂取がある程度は可能になります。しかし、狭窄の原因によっては、繰り返し拡張術を行う必要がある場合もあります。
当病院(静岡県立静岡がんセンター)の成績では、拡張回数は様々ですが、内視鏡治療後のほぼ100%の患者さんで食道狭窄の内視鏡的治療に成功しています(図)。この成績の中で、バルーン拡張で効果がなかったものは、狭窄を繰り返すなどの理由でまれに外科的治療が行うことがあります。
 

食道狭窄拡張術に伴う危険性(リスク)・合併症について

食道狭窄拡張術の合併症には、出血と穿孔があります。出血のほとんどは自然に止血されますが、出血が止まらない場合には内視鏡的に止血術を行うこともあります。また、拡張術により食道の壁が裂けてしまう、穿孔という合併症が起こる可能性もあります。穿孔には炎症や感染を伴うことがあり、咳や発熱、胸痛等の症状が出ます。そのような場合でも、抗生物質等の薬を使いながら食事をとらずに安静にしていると、たいていは自然に傷口がふさがります。しかし、中には手術が必要となったり、1ヶ月近く絶食する必要がある場合もあります。その他、これ以外にもまれな合併症が起こることがあります。
狭窄を解除する研究と開発の進歩により、出血や穿孔の頻度は減りより安全・確実に処置ができるようになりました。内視鏡を用いて様々な処置を行えるようになったために、検査の回数も少なくて済むようになり、治療に要する時間も以前より短縮されるようになりました。最近では、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)後に起こる狭窄を予防するため、早い時期からバルーン拡張術を行って狭窄が起こりにくくするような方法も取られています。
このように、医療の進歩と共に安全性の向上と身体的な負担の軽減が図られていますが、偶発症を全くゼロにすることは難しいのが現状です。