食道狭窄について

食道狭窄とは、食道の一部が狭くなって食物が通りにくくなる病状のことで、良性のもの、悪性のもの、食道がん治療後に起こる狭窄の3つに分類されます。
 

良性の食道狭窄

良性の食道狭窄は、先天性のもの、胃から胃酸が逆流することで食道が炎症を起こす逆流性食道炎によるもの、食道にできた潰瘍によるもの、酸・アルカリなどによる腐食性食道炎に伴って起こる瘢痕性(傷あとのような状態)の狭窄などがあります。また、迷走神経の異常によって下部食道噴門部(胃の入口付近)が弛緩不全を起こした「食道アカラシア」と呼ばれる症状も良性の食道狭窄に含まれます。
良性の食道狭窄の場合は保存的治療を優先します。逆流性食道炎の場合は、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬の内服やバルーン拡張術(後述)を行います。内科的治療では効果がない抵抗性の狭窄に対しては、外科的手術が選択されます。
 

悪性の食道狭窄

悪性食道狭窄の多くは進行性の食道がんによるものです。早期の食道がんは症状がほとんどないことが多いのですが、進行がんになると腫瘍が食道を塞ぐように大きくなり、食事が通りにくくなります。
 

食道がんの治療後の狭窄

他にも、内視鏡を用いた手術や外科手術、抗がん剤による治療など、食道がんを切除したり小さくする治療を行った後におこる食道狭窄があり、これらは大きく3つに分類されます。

(1)内視鏡的粘膜切除術(EMR)・内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)後の瘢痕狭窄(はんこん狭窄)
食道早期がんの一部は、内視鏡を用いて粘膜および粘膜下層を切除して根治させる、EMRやESDと呼ばれる治療が行われます。この方法は、外科手術に比べて身体への負担が少なく安楽に治療できるうえ、後遺症も少なく治療後の生活の質の向上が期待できます。しかし、大きな病変を治療した場合には、切除した傷痕の部分が正常に戻る過程で狭窄が発生することがあります。

(2)外科的切除術後の吻合部狭窄
食道がんの標準的手術形式として、食道の大部分を切除して胃を筒状に形成し、食道の代わりに用いる方法が用いられています。しかし、術後にそのつないだ部分が狭くなる吻合部(ふんごうぶ)狭窄を起こすことがあります。

(3)放射線療法、化学療法(抗がん剤治療)後の狭窄
放射線が持つ電離作用を利用して悪性腫瘍に照射し、がん細胞を死滅させる放射線治療に対し、化学療法は、医薬品である抗がん剤を使って病気を治療します。放射線療法は単独で行われることは少なく、化学療法を併用した化学放射線療法が根治療法として行われています。治療後に癌が縮小しない場合や、治療によって炎症を起こす場合では、飲食物の通過が困難となる狭窄を起こすこともあります。

このようにして生じた食道の狭窄を、内視鏡を用いて広げる治療を内視鏡的食道拡張術と言います。