ここからは、バルーン拡張術による食道狭窄の治療の内容を、手順を追ってより詳しく解説します。
1.上部消化管用の内視鏡(胃カメラ)を口から挿入し、食道の狭窄している部分を観察します。
 
2.内視鏡についている鉗子チャンネル(使用する器具を挿入するルート)から造影剤を注入して、狭窄している部分をエックス線で造影します。この造影により、狭窄部位や狭窄の長さ、狭窄の径などの情報が得られます。
 
3.狭窄部をエックス線透視像で確認した後、狭窄の状態に適したサイズの拡張用バルーンカテーテルを挿入し、狭窄している部分を拡張します。狭窄の状況(径・長さ・硬さ)によって、バルーンの径(太さ)や拡張圧、拡張する時間が異なります。基本的には、狭窄の径より小さいサイズのバルーンで徐々に加圧していきます。

4.狭窄が硬く痛みが強い場合や、高齢の方で何度も内視鏡的治療ができない場合には、細い管を鼻から胃まで通してそこから栄養を入れたり、お腹の表面に胃まで通じる穴をあけ、そこに通したチューブから胃に直接栄養を送り込む「胃ろう」と言われる方法を用いる場合もあります。また、短期的には口からチューブを入れて様子を見ることもあります。

拡張術にかかる時間は5~10分程度です。食道バルーン拡張術は、基本的には入院の必要がありません。しかし、後述する合併症が起きた場合には、緊急入院が必要となります。この場合の入院期間は、合併症の程度とその後の経過により異なります。