治療を受ける前に注意すべきこと

  • 大腸内視鏡治療を安全に行うためには、障害となる便などを完全に除去しなくてはなりません。水溶洗浄剤(ニフレックなど)を2ℓ飲用します。不十分な場合は洗浄剤を追加で飲用します。
    また、治療数日前からキノコ類や野菜などの消化されにくいものなどの摂取を控えることが必要です。
  • 心臓や脳などの病気でワーファリンなどの抗凝固薬を服用している方、不整脈で埋め込み型ペースメーカーを使われている方は必ず担当医師に相談して指示に従って下さい。
  • 治療後に生活の制限を必要とします。スケジュールを立てるときには、注意してください。(後述)
 

内視鏡治療の実際

内視鏡治療では、病変の形や大きさにより治療法や使う道具(処置具)が変わります。

ポリープ切除術(ポリペクトミー)

有茎性の病変に対する治療法です。茎の部分は病変ではない為、その部分にスネアと呼ばれる円形状のワイヤを掛け通電させ焼き切ります。茎部が太い場合は内部に太めの血管が存在することがある為、切除後の出血の危険性が高くなります。このような場合は事前に茎部を留置スネアと呼ばれるビニール製の糸で結んだり、クリップにて残りの茎部を挟み止血します。止血に使用したクリップ等は、1週間程で自然に脱落して便とともに排泄されます。
 

内視鏡的粘膜切除術

茎のない病変や平坦な形状の病変に対する切除術で、最も多く行われている治療法です。
前述した腸の壁の5層構造のうち粘膜下層部分に局注針を用いて生理食塩水などの液体を注入(局注)し病変を下から盛り上げます。つぎにスネアを正常粘膜も含めるように掛けて絞めてから、通電させ焼き切ります。局注する目的は、スネアを掛かりやすくすることと止血の効果が得られるからです。
スネアには病変の大きさに合わせて様々の円の形や大きさがありますが、この治療では一般的には2cm程度まで病変は一回で切除可能です。条件が良ければ4cm程度までは切除できることもありますが、大きな病変に対しては同様な手技を繰り返して行う分割切除も行うこともあります。この場合は病変の取り残しが無いように注意しながら切除する必要があります。
また病変が大きくなるほど治療後に出血や腸に穴が開く(穿孔)など合併症の危険性が高くなりますので、合併症を防ぐために切除後に縫い合わせることもあります。
 

ホットバイオプシー

数ミリ程度の小さい病変を対象とした治療法です。開閉可能な金属製の2つのカップがついた道具(ホットバイオプシー鉗子)を用い、病変を焼き切ります。カップの外側に熱が発生するため止血と切除の両方の効果が得られる一方、カップ内には熱発生がないため切除した組織には損傷を与えず、すぐに回収できる利点があります。簡単に行えることも利点の1つです。
 

治療後の留意点

治療後に出血が起こらないようにするために、生活(活動)の制限を必要とします。具体的には、飲酒や運動、長湯など血圧上昇や血管拡張するような行為を術後約1週間は避けるようにして下さい。
 

治療後の診断

内視鏡治療では切除した病変を全て回収します。これらの病変は特殊な処理を施された後、専門医(病理医)による顕微鏡診断(病理診断)がなされます。具体的には、良悪性の判断、癌の種類、癌細胞の浸潤の程度などを約1週間で評価します。
この結果により内視鏡治療だけで十分であったかどうかの判定がなされ、必要性があれば再検査や追加治療の判断がなされます。病理診断は今後の方針にも関わる非常に重要なものです。