患者様体験談 

尿漏れがなかったら、
75歳くらいまでは働いていたと思います。
私はインターネットで、
やっとこの治療法に行き当たりました。
もっと多くの人に知ってほしいですね。

村松祐治さん(仮名、1939年生まれ)

現在はリタイア(65歳まで大手企業にエンジニアとして勤務)
尿漏れの程度: パッド10枚相当(尿漏れ手術前)
前立腺全摘手術後からの経過年数: 約13年

うつ状態寸前から、尿漏れ手術で生活がほぼ完全に元に戻りました。今は10数年ぶりに、何の制限もない解放感を味わっています。

尿漏れでうつ状態寸前に

60歳頃から、健診でPSA(前立腺がんの腫瘍マーカーとして用いられる前立腺特異抗原)の数値が高いと指摘されていましたが、2004年、65歳の時の5回目の生検で前立腺がんと確定診断され、開腹手術を受けました。

担当の医師からは、「がんが尿道括約筋の近くまで達しています。再発を防ぐため、ギリギリまで切除すると、尿道括約筋が傷つくおそれがあり、術後は尿漏れが起きる可能性があります」と説明を受けていました。しかし、手術直後はまったく尿漏れはなく、ほっとしていたところ、3ヵ月後、今度は尿がパタッと出なくなってしまいました。「尿閉」でした。

その間、担当医が変わり、新しい医師から「尿道が狭くなっていますので、広げる手術をしましょう」と、尿道に内視鏡を入れて狭窄部分を削ったところ、尿漏れが始まってしまいました。1日約2000ccの尿が自分の意思に関係なく漏れ続ける“全面漏れ”でした。オムツは気持ちが悪いので、尿取りパッドにしたものの、最大でも150cc程度しか吸水しません。1時間に100ccは漏れていましたから、1時間毎にトイレに行ってバッドを変えなければならない生活が始まりました。会社からは「退職後もぜひ勤務を続けてください」と言われていましたが、迷惑はかけられません。この状態では無理だと判断し、退職を決断しました。退職後の半年は、心身ともに非常に苦痛でした。打ち込んでいた仕事を失い、がん再発への不安に加え、尿は漏れ続け、外に出るのもおっくうでした。好きなゴルフやバス旅行に誘われても、到底行けません。仲のよい友人にもすべては話せませんでした。うつ状態に陥りそうになっていたのだと思います。

私のがん手術後の状態について、前任の医師との引継ぎがうまく行っていなかったことも尿漏れを引き起こした原因の一つと思われ、新しい担当医とはさんざんやり合いました。「障害者認定の申請をされたらどうでしょうか?」と勧められたのには、配慮とはわかっていても自分としてはショックでした。「65歳まで健康体で仕事も順調だったのに、自分の人生はこんなものなのか……」と。

半年経った頃、インターネットでレッグバッグ(脚に装着する蓄尿袋/排尿バッグ)を見つけました。これなら1日1回の排尿バッグ交換で済み、少し負担が軽くなりました。ゴルフや近場への旅行なら行けます。但し、ゴルフの昼休みには必ずトイレの個室に入って排尿バッグの交換をしなければ安心できないですし、旅行へ行っても漏れていることには変わりがありませんので、湯船には入れず、宿泊を伴う旅行は断っていました。また、レッグバッグはどうしても外れる可能性があり、頭のどこかに常に不安感がありました。

インターネットで知った「人工尿道括約筋」

人工尿道括約筋のことを知ったのは前立腺がん手術から3年後、これもインターネットです。いくつかの大学病院のウェブサイトで見つけました。2007年頃です。かかっていた病院では人工尿道括約筋のことは、誰も教えてくれませんでした。医師も看護師も知らなかったのではないでしょうか?

自宅から比較的近い病院で人工尿道括約筋の植込み手術(「尿漏れ手術」)をしている情報もネットで入手し、すぐに受診しました。先生から詳しい説明を聞いて、「ぜひ手術を受けたい」と思いましたが、当時は保険適用前で、費用は170~200万円。またちょうどその頃に、心臓の冠動脈狭窄でステントを入れたことから、血液をサラサラにする薬を飲み続けなければならず、心臓の担当医からは「出血を伴う手術などもってのほか」とのことで、治療できるタイミングを待つことにしました。

結局私が「尿漏れ手術」を受けたのは、2017年の5月でした。尿漏れが始まってから約10年以上経っていました。

「尿漏れ手術」を受けるに当たっては、先生からよく説明していただいていましたし、自分でも海外の文献などを調べて安全性が高いことはわかっていましたので、怖いとか不安に思うことはありませんでした。むしろ、尿漏れは嫌だ、解決したい、という思いの方が遥かに強かったです。待ち焦がれていました。家族も私の意思を尊重し、同意してくれていました。

手術までの間に、血液をサラサラにする薬を8日間止める必要はありましたが、手術は全身麻酔で問題なく終わり、感染症もなく、入院期間は約1週間、高額療養費の還付もあり実際の自己負担額は約5万円でした。一方、レッグバックの費用は月に1万円くらいでしたから、尿漏れ手術の間で200万円以上は掛かったことになります。

「尿漏れ手術」後、パッドなしに!

数週間後、いよいよ作動させました。最初、勘違いして陰嚢に留置したポンプを1回押しただけでよいのかと思っていましたが、先生に確認したところ、連続して3回押すことを教えていただき、その後はまったく 不快感はありません。以前同様、男性用の小便器で立って排尿、パッドも不要となりました。本当に10年以上もの間、苦しんでいたことが嘘のようです。尿漏れ専門の先生は、私にとって神様。感謝してもし切れない気 持ちでいっぱいです。

生活は一変しました。旅行にも行けますし、遠方までの運転も大丈夫。湯船にも浸かることができます。会社員時代からの趣味の囲碁も再開しました。週3回くらい碁会所に出かけたり、パソコンで対局したりしてい ます。尿漏れがないことで、集中力が高まったことを感じています。また、心臓病のほかに慢性腎炎もあるため、1日2リットル程度の水を飲む必要がありますが、尿漏れがあった時は抑え気味でした。今は十分に水分 を摂ることができます。

気がかりと言えば、装置の故障、寿命だけです。カバンにパッドを1枚入れているのも、万が一に備えてのこと。でも、何かあったとしても再び人工尿道括約筋を入れることでしょう。この解放感は何物にも代えがた いものがあります。もし私が尿漏れになっていなかったら、75歳くらいまでは働いていたと思います。自分の時間は取り戻せませんが、今後はもっと多くの人にこの治療法を知ってほしいと願っています。

パソコンでの囲碁の対局に集中する村松さん。頭の体操にもなるという。80歳になったら運転免許を返上し、自転車を移動手段と健康法に利用したい考え。局部への圧迫がないサドルを検討している。

前立腺を摘出された方の尿漏れ対策

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