患者様体験談 

何より気持ちがラクに。
充実感ある毎日を取り戻しました。

木内義信さん(仮名、1948年生まれ)

幼稚園バス運転手
尿漏れの程度: パッド6~7枚、
オムツ2枚相当/1日(尿漏れ手術前)
前立腺全摘手術後からの経過年数: 6ヵ月以上経っても止まらない尿漏れ

前立腺全摘出後、6ヵ月以上経っても止まらない尿漏れ

定年後、幼稚園の送迎バスの運転手をしています。園児たちと触れ合える時間は、実に楽しい。生き甲斐です。この仕事を続けることができ、尿漏れ手術を受けて本当によかったと思います。

2017年のことです。70歳を前にした定期健診でPSA値が高く、精密検査を受けたところ、前立腺がんと診断されました。全摘手術か放射線治療かどちらか、と主治医から言われましたが、全摘では90%の人が完治すると聞いて全摘を選び、その年の8月、腹腔鏡による手術を受けました。手術後、PSA値が下がらず、放射線治療をしましたが、それでもうまくいかず、ホルモン治療でやっと数値が下がりました。

一方、手術直後からの尿漏れは3ヵ月経っても6ヵ月経ってもまったく治りません。主治医からは手術の前に「手術後はほぼ全員に尿漏れが起きる」と聞いてはいましたが、「ほとんどの人が半年くらいで収まる」との話でした。でも、私の場合は半年以上経っても常に尿が漏れ、漏れる量にも変化がなく、治る気配がないのです。骨盤底筋体操も3ヵ月しましたが、全然変わらないので、あきらめてやめてしまいました。

流れ続ける尿ー旅行も外出もおっくうに

私の尿漏れの状態は、“流れ続ける”という表現が一番合っていたと自分では思います。尿取りパッドとオムツを併用し、パッドは1日6~7枚、オムツは2枚は使っていました。当初、仕事を辞めるつもりでしたが、園の理事長が医師で理解があり、「園児と接していれば気が紛れるから」と、継続を勧められて再開しました。家でイライラしていても仕方ないですから、これはありがたかったですね。

それでも漏れているのは変わりません。朝7時15分、パッドにオムツを重ねて出勤。一旦10時に自宅に戻ったらすぐにパッドの交換です。午後1時15分に再度出勤しますが、その前にも交換します。常時、尿が流れ続けているので、合間にも適宜交換しなれければなりません。寝る時はベッドにビニールシートを敷いていました。この頃、パッド・オムツに使っていた費用は、月13,000円くらいにもなっていました。

漏れは運転席や椅子に座っている時は大丈夫なのですが、立つ時は、前(陰部)を手で押さえないとザーッと尿が流れてしまいます。前を押さえるなんて、人目もありますから人前ではなかなか難しいです。一度、失敗してしまい、オムツから染み出して、園児に「くさい、くさい」と言われてしまったことがあります。情けなく、悲しかったですね。

そんなふうですから、旅行に行きたいなんて思えません。一度、子どもや孫たちに誘われて近場の温泉に行きましたが、お風呂に入れるわけないですし…。家族で外食するのも気が進まず、それでも行った時はトイレの近くに席を取り、立ち上がる時は目立たないように前を押さえてそっと行く、ということをしていました。

スマホで検索、「人工尿道括約筋」を知る

本来私は健康なのに、完治する90%に入らなかったことが、なかなか納得できませんでした。でも、とにかくこの状態を解決したいと、自分でも調べ始め、手術の際に耳にしていた「括約筋」をスマホで検索したところ、「人工尿道括約筋」に行き当たりました。そこで、がんの手術時から相談に乗ってもらっていた病院内のがん相談支援センターに行き、看護師さんに「人工尿道括約筋」について詳しい話を尋ねると、比較的近くの病院に専門の先生がいて、治療を受けられることがわかったのです。その後、主治医から紹介状をもらい、2018年4月、尿漏れ手術を受けることになる病院で診察を受けました。検査の結果は「重度の尿失禁」(パッドテストの尿量1622g/1日)でした。

人工尿道括約筋を植込む「尿漏れ手術」は前立腺がんの手術後1年程度経ってから、と聞きましたが、1年経ったらすぐに手術を受けられるわけではないと考え、最短スケジュールでの手術を依頼しました。(尿漏れ手術は)決断した、というよりも、「それしかない」と思った中で、それに「頼らざるを得ない」という気持ちでした。不安はなく、期待しかありませんでした。

“オシメ”が取れた!!

「尿漏れ手術(人工尿道括約筋植込術)」の実施は2018年7月、結局、前立腺全摘手術から約1年経っていました。退院後、6週間、人工尿道括約筋を体になじませていよいよ9月、1泊2日の入院で、先生から操作方法を教わりました。とても簡単でした。実際にかかった費用は、手術時6万円程度(高額医療費制度を利用)、9月の入院時は4万円程度で合わせておよそ10万円で済みました。

最初の感想は、「オシメが取れた!!」です。これ以上のうれしいことはない、という思いでした。病気で寝たきりなら仕方がないけれど、歩けて仕事もできる人間がオムツをするというのは、やはり、何とも言えないものがありました。オムツをしていても最初は「3~6ヵ月で尿漏れが治るならいいか」と受け止めていましたが、その望みがなくなって、「ずっとこのままではいられない」と悶々としていた時、「人工尿道括約筋がある」とわかって光が射しました。

今は、女性用のパッドを半分に切って1日2~3回交換する程度。漏れを気にすることはなくなりました。生活リズム自体は以前と変わりませんが、精神的には大きく変わりました。何より気持ちがラクです。働かせてもらって人とのつながりもあり、朝は40分歩いて通勤している(午後は車ですが)ので運動にもなる、充実感あるなあ、と。この治療法に出会ってよかった、と心から思っています。

趣味は工作や手芸。「いろいろ工夫するのが大好き」と語る。

前立腺を摘出された方の尿漏れ対策

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