膀胱がん、前立腺がん、人工肛門・膀胱瘻(ろう)、直腸・膀胱瘻分離手術を経て尿漏れに
今年(2018年)、71歳になりました。振り返ると62歳から現在まで、十数回の手術を受けています。仕事は62歳の時点で辞め、今は妻に養ってもらっています(笑)。
最初は膀胱がんでした。数回手術して治ったかと思ったら再発、また手術です。そして、2015年には前立腺がんが見つかりましたが、手術の際、直腸に15ミリの穴(ろう孔)が開いてしまい、1週間後に緊急手術。 人工肛門、膀胱瘻となりました。膀胱瘻は膀胱に管を通して体外に尿を出すもので、私の場合はレッグバッグに繋いで尿を溜めていました。人工肛門と両方でしたから、かなり大変でした。
現在の主治医(尿漏れ専門医)に変わったのは、前立腺がんの時の主治医の紹介でした。大学の先輩だったようで、私のその後を託された形になりました。新しい主治医により、2016年1月にろう孔閉鎖手術を受 け、ろう孔が無事に閉鎖していることを確認し、6月に膀胱瘻を抜去しました。
その際、先生から尿漏れが起きる可能性についての説明はありましたが、「骨盤底筋体操で訓練すれば大丈夫」と軽く考えていました。しかし抜いた途端、まさに“ダダ漏れ”が始まってしまいました。オムツの重さで 尿量を量るなどということもできないくらいで、漏れている感覚もないのに、座っていて立ち上がるとズボンまで染み出している、という状態でした。しかし、先生からは事前に「人工尿道括約筋や尿漏れ手術」のこと を聞いていたことから、自分でもインターネットで「尿漏れ手術」のことを確認していて、そこまで不安には考えていませんでした。先生からは、尿漏れ手術は、「ろう孔の治療が済んでから」と言われていました。
泣きながらの帰宅
私には意外と楽天的なところがあり、手術も怖いと思ったことはありませんでしたし、そういう状態にあっても、「時期が来たら先生に治してもらえばいい」と落ち込むこともなく、オムツに尿取りパッドを当てて外 出は頻繁にしていました。電車や自動車など乗り物に乗るのが大好きなので、オムツと尿取りパッドをリュックサックに詰め、秋田や青森など、あちこち旅行に出かけていました。暇を見つけてはオムツを交換しながら でしたけれども。
しかしながら、楽天的な私であっても「面倒くさいなぁ」と思いましたし、あまりにもひどい漏れが続くと、「治る」という感覚が持てなかったのが不安でした。特に、私は長年、地域の自治会長を務めており、最大行事で ある年2回のお祭りで本来の役目が果たせず、自治会館で待機しているだけで、浴衣や着流しも着られないのが、とても寂しかったですね。それと、私はよく覚えていないのですが、妻によると仲間と飲みに行ったある 晩、ズボンをびっしょり濡らして泣きながら家に帰ってきたそうです。今考えると、やはり心の奥底では尿漏れがつらかったのだろうと思います。
待望の「尿漏れ手術」
2017年になって人工肛門も取れ、しばらくして先生に「そろそろお願いします」と申し上げたところ、「じゃ、やりましょう」となって、8月に「人工尿道括約筋植込み術」(尿漏れ手術)をすることになりました。迷いも恐怖心もなかったです。
入院期間は12日間、手術は入院から4日目、1~2時間程度だったと思います。その後、約2ヵ月置いて、作動させるための教育入院をしました。入院の翌日、初めて自分で操作してみましたが、まったく難しくはなかったです。陰嚢に植え込まれたコントロールポンプを数回押すだけ。すぐにできたので、1週間の予定だった入院が3日で退院になりました。
尿漏れ手術後、最初におしっこが出たときの感想は「あー、久しぶりだな」という感じでした。「これでオムツも大分減るな、どの程度になるのかな」と楽しみな気持ちでもありました。手術後もパッドは多少必要と聞いていましたが、1ヵ月くらいで、ほとんど漏れがなくなりました。おしっこした後の若干の漏れも、テレビの健康番組で「排尿後、会陰部を押すとチョイ漏れがなくなります」と出演した先生が話していたので、その通りにすると本当に漏れなくなりました。
小便器で用を足す時、パッドをしているとコントロールポンプを操作しにくいので、現在は、パッドもほとんどなしで、外出時に用心のために1枚携帯しているくらいです。仲間と一緒にトイレに行って一緒に出てくる、というようなこともできるようになりました。それまでは、一人で個室に入ってとか、身障者用のトイレを使ったりしていましたからこれも少しうれしいことの一つです。それと、手術の際の傷跡はありますが、旅行に行って皆と温泉に入れることがありがたいです。それまでは、常に漏れていましたから温泉どころではありませんでした。
青春、復活!
そして、何よりなのは、私の生き甲斐とも言えるお祭りです。結構有名なお祭りで、遠方からもたくさんの方が見物に来られます。尿漏れ手術後の秋のお祭りでは、久しぶりに着流しで自治会長としての務めを果た すことができました。最高の気分でした。
私の性格もあり、家族はもちろん、仲間にも病気のことやオムツをしていることも、包み隠さず開けっ広げに何でも話していました。だから協力も得られましたし、気持ちの面でも支えられました。でも、そういう人 たちばかりではないと思います。人知れず苦労している人もいることでしょう。今後は、インターネットやパンフレットなどでもわかりやすく正しい情報を伝えてほしい。私も同じような境遇の人に出会ったら、私の体 験を伝えたいと思っています。
「青春18きっぷ」をご存じですか? 期間限定でJRの普通車だったら全国どこまでも乗り降りできます。日帰りなら名古屋辺りまで行って、お昼を食べて帰って来られます。近々、それを実行しようと思っています。 どこかで温泉にも浸かって…。本当に楽しみです!
最後に尿漏れで悩んでいる方へ 一人で悩まず、まず先生に相談してみてください。丁寧に説明していただけます。恥ずかしがらずにまず病院へ!!
明るい人柄で、自治会長として人望の厚い藤井さん。2017年の秋祭りで。