肝癌の治療

外科的肝切除

全身麻酔下に開腹または腹腔鏡下に肝臓の腫瘍とその周辺組織を切除する治療法です。

経皮的エタノール注入療法(PEI またはPEITと略)

超音波(エコー)ガイド下で、からだの表面から細い針を腫瘍に穿刺し、エタノール(アルコール)を腫瘍に注入し腫瘍細胞を壊死させる治療法です。一度の治療で処置できる範囲が小さいため、何日もかけて繰り返し治療する必要があります。

経皮的ラジオ波焼灼療法(ラジオ波治療:RFA)

超音波ガイド下で、からだの表面からラジオ波を流す電極針を腫瘍に穿刺し、電極周辺組織の抵抗加熱により腫瘍細胞を熱凝固壊死させる治療法です。

肝動脈化学塞栓療法(TACE)

血管造影の技術を応用した治療。肝腫瘍が肝動脈から栄養を受けていることから、この栄養血管の血流をせき止める(塞栓)ことで腫瘍を兵糧攻めにして壊死させる治療法です。通常は抗癌剤を同時に動脈注射します。

全身化学療法

癌の化学療法は化学物質(抗癌剤、分子標的治療薬)を用いて癌細胞の分裂を抑え、癌細胞を破壊する治療法です。
肝癌は直径2 ~ 3cm の大きさになると、門脈経由で肝内各所に転移を始めます(肝内転移多発)。一方、肝癌症例は基礎疾患として慢性肝疾患、とりわけ肝硬変を有していることが多く、いったん根治的に切除しても、新規の発癌を起こして再発することも多くあります(多中心性多発)。臨床的にはこの2 つの多発形式を明確に区別することは必ずしも容易ではありませんが、前者による多発の方が悪性度が高く、生存率に及ぼす影響が大きくなっています。肝癌の治療法は、(1)腫瘍の大きさ、(2)単発か多発か、(3)肝予備能、の3点から適した治療法が選択されることが多く、さらに(4)脈管侵襲・肝外転移の有無も必ず考慮します。
下の表は代表的な治療法の長所・短所をまとめたものです。肝癌に対して行われる様々な治療法は、これ以外に「根治性」「再発リスクの大きさ」「癌の存在部位」など、全ての観点を考慮して決定しなければならず、ただ一つの治療法が最も優れているということはありません。種々の治療法を柔軟に組み合わせて行うこと(集学的治療)こそが、肝癌患者の生活の質(Quality oflife)や生存率の向上につながるのです。